「私の部屋はいつしかコバエの巣になっていました」。そう語るのは都内のワンルームアパートに一人で暮らす20代の女性美咲さん(仮名)です。彼女の部屋が異常な状態になったのは仕事のストレスがきっかけでした。毎日疲れ果てて帰宅し食事はコンビニの弁当や出前。その容器をすぐに捨てることができず部屋の隅に積み重ねていきました。「週末に片付けよう」。その繰り返しがやがて小さなゴミの山を築き上げそして最初の異変が訪れました。数匹のコバエが部屋を飛び回り始めたのです。最初は市販のコバエ取りを置いてやり過ごしていました。しかし夏が近づくにつれてその数は爆発的に増えていきました。ゴミの山の上には常に黒い虫の雲ができ食事をしようとすれば食べ物にたかってくる。夜眠ろうとすれば顔の周りを飛び回る。美咲さんは精神的に追い詰められていきました。友人を呼ぶこともできず家にいること自体が苦痛になりました。このままでは自分がダメになる。そう思った彼女は震える手でインターネットで見つけた特殊清掃も行う片付け業者に助けを求めました。見積もりに来たスタッフは部屋の惨状に驚きながらも「大丈夫ですよ、よくあることです。一緒にきれいにしましょう」と優しく励ましてくれました。作業当日スタッフはまず空間全体に殺虫剤を噴霧し成虫を駆除。その後防護服姿でゴミの山を手際よく片付けていきました。ゴミの中から腐ったバナナやかびの生えたパンなどコバエの発生源が次々と現れました。全てのゴミが撤去され部屋が徹底的に清掃・消毒された後。美咲さんが部屋に足を踏み入れた時そこに一匹のコバエもいないことに彼女は涙を流しました。「空気が美味しい」。そうぽつりと呟いた彼女の表情は晴れやかでした。あのおびただしい数のコバエは彼女の心の重荷そのものだったのかもしれません。
コバエだらけの部屋!ある女性の脱出劇