私の祖母は、昔から物を大切にする人で、戦後の厳しい時代を生きてきたせいか、「もったいない」が口癖でした。しかし、数年前からその「もったいない」が度を超し、自宅がゴミ屋敷と化してしまいました。私が実家を訪れるたびに、祖母の家の状態は悪化していました。床には新聞紙や雑誌が散乱し、古い洋服がソファを埋め尽くしていました。台所には使い終わった食器が積み重ねられ、異臭が漂っていました。祖母自身は、その状況を全く気にしていないようで、「これは後で使うから」「まだきれいだから」と、私が片付けようとすると怒り出す始末でした。私は途方に暮れ、なぜ祖母がこんな状態になってしまったのか、理解に苦しみました。高齢者のゴミ屋敷問題は、様々な心理的要因が絡み合っていると言われています。私の祖母の場合も、まず考えられるのは、加齢による認知機能の低下です。物がどこにあるか分からなくなり、整理整頓の優先順位がつけられなくなることで、物が溜まりやすくなります。また、判断能力の低下から、不要な物と必要な物の区別がつかなくなることもあります。次に、精神的な要因です。特に配偶者との死別や、子どもとの離別など、喪失体験を経験した高齢者は、孤独感や喪失感を埋めるために物を溜め込む傾向があると言われています。物が、亡くなった人との思い出や、失われた時間への執着の象徴となることもあります。祖母も、祖父が亡くなってから急速に物が溜まり始めた記憶があります。さらに、身体的な制約も大きな要因です。足腰が弱くなると、高い場所の物を取ったり、重い物を運んだりすることが困難になります。掃除やゴミ出しといった日常生活の行動がおっくうになり、結果的にゴミが蓄積されていくのです。私はまず、祖母の介護認定を申請し、ヘルパーさんによる定期的な訪問介護を導入しました。ヘルパーさんには、祖母の身体介護だけでなく、片付けのサポートもお願いしました。