私は民生委員として、地域の高齢者の方々の生活を長年見守ってきました。その中で、特に心を痛めるのが、高齢者の「ゴミ屋敷」問題です。先日、私が担当する地域で、Bさんという一人暮らしの高齢女性の家がゴミ屋敷になっているという通報が入りました。Bさんは、以前は社交的で、地域の活動にも積極的に参加している方でしたが、最近は外出する姿を見かけなくなり、回覧板も受け取らないことが増えていました。通報を受けてBさんの家を訪れた時、私は目を疑いました。玄関から既に物が積み重なっており、リビングは足の踏み場もないほどに散乱していました。異臭もひどく、ハエが飛び回っている状態でした。Bさん自身は、狭い通路の奥でテレビを見ていましたが、私が話しかけても曖昧な返事しかせず、どこか諦めたような表情をしていました。この状況を見て、私は地域の見守りの重要性を改めて痛感しました。ゴミ屋敷問題は、高齢者の孤立と深く関連しています。Bさんも、夫を亡くしてからは、一人で過ごす時間が増え、地域との繋がりが希薄になっていったのかもしれません。周囲との交流が減ることで、自分の状況を客観的に見ることができなくなり、また、助けを求めることも難しくなります。民生委員として、私がまず行ったのは、地域包括支援センターへの連絡でした。彼らは高齢者の様々な問題に対応する専門機関であり、多職種連携の中心となります。同時に、近隣住民の方々にも協力を仰ぎました。地域の自主的な見守り活動グループに事情を説明し、Bさんの様子を日常的に見守ってもらうようお願いしました。最初は、「他人の家に口出しするのは…」と遠慮する声もありましたが、Bさんの健康状態や安全を考えると、放っておくわけにはいかないことを丁寧に説明しました。ゴミ屋敷の清掃については、行政の専門部署と連携し、Bさんの同意を得ながら、少しずつ作業を進めていきました。この過程で重要だったのは、Bさんの「もったいない」という気持ちを尊重しつつ、なぜ片付けが必要なのか、片付くことでどんなメリットがあるのかを根気強く説明することでした。そして、清掃作業には地域住民の方々もボランティアとして参加してくれました。皆で協力し、何日かかけてBさんの家はきれいになりました。