私は法律相談所で弁護士として働く中で、高齢者の「ゴミ屋敷」問題に直面するご家族からの相談を数多く受けてきました。その多くは、どうすれば解決できるのか、法的にどのような手段があるのか分からず、途方に暮れている方々です。先日も、Cさんという方から相談がありました。80代の母親が一人暮らしをしており、自宅がゴミ屋敷状態になっているとのこと。Cさん自身は遠方に住んでおり、月に一度程度しか実家に帰れないため、状況は悪化する一方だと言います。母親は頑なに片付けを拒否し、Cさんが片付けようとすると激しく抵抗するそうです。このような状況で、家族が法的に取れる手段はあるのでしょうか。高齢者のゴミ屋敷問題は、単なる私的な問題として片付けられるものではありません。放置すれば、火災や衛生問題、近隣住民への迷惑など、社会的な問題に発展する可能性があります。そのため、日本の法律や制度の中にも、この問題に対応するための枠組みが存在します。まず、高齢者自身の判断能力が低下している場合、成年後見制度の利用が検討されます。成年後見制度は、認知症などにより判断能力が不十分な方のために、家庭裁判所が後見人を選任し、その方を保護・支援する制度です。後見人は、財産管理や介護・福祉サービスの契約などを行うことができ、ゴミ屋敷の片付け業者との契約や、福祉サービス導入の同意なども、本人の意思を尊重しつつ進めることが可能になります。しかし、この制度は本人の同意が必要となる場合が多く、Cさんの母親のように片付けを拒否しているケースでは、導入が難しいこともあります。次に、自治体の条例に基づく対応です。多くの自治体では、「空き家対策特別措置法」や独自の条例を制定し、管理不十分な家屋、特に近隣に迷惑を及ぼすゴミ屋敷に対して、指導や命令を行うことができます。具体的には、自治体から所有者に対して清掃や改善の勧告、命令が行われ、それでも改善されない場合には、行政代執行として自治体が強制的に片付けを行い、その費用を所有者に請求することも可能です。ただし、この手続きには時間と労力がかかります。