私がソーシャルワーカーとして働き始めて十年が経ちますが、高齢者のゴミ屋敷問題は、その中でも特に複雑で根深いケースが多いと感じています。先日担当したAさんのケースも、まさにそうでした。Aさんは80代の一人暮らしの女性で、近隣住民からの通報でゴミ屋敷が発覚しました。玄関のドアを開けた瞬間、まず感じたのは強烈な悪臭でした。足元には新聞紙やチラシが山のように積まれ、台所には腐敗した食品が散乱していました。Aさん自身は、狭い通路を縫うようにして生活しており、まるでその状況が当たり前であるかのように振る舞っていました。しかし、よく観察すると、身体のあちこちに不衛生な環境による皮膚炎が見られ、栄養状態も良くないことが分かりました。ゴミ屋敷の背景には、様々な要因が考えられます。Aさんの場合、長年連れ添った夫を亡くして以来、趣味だった園芸もやめ、外出することも減ったと聞きました。孤独感からくる精神的な落ち込みが、物を溜め込む行為に繋がった可能性が考えられます。また、身体機能の低下も無視できません。高い場所の物を取る、重いゴミを運ぶといった行為が難しくなり、結果として片付けが滞ってしまったのでしょう。さらに、認知機能の低下も重要な要素です。物の価値判断が難しくなったり、整理整頓の概念が失われたりすることで、ゴミとそうでないものの区別がつかなくなり、結果としてゴミが溜まっていきます。Aさんのケースでは、初期の認知症の兆候も見られたため、まずは医療機関での受診を勧めました。同時に、地域包括支援センターと連携し、介護サービスの導入や、定期的な訪問による見守り体制を構築しました。ゴミ屋敷の清掃については、Aさん自身の同意を得るのに時間がかかりました。「まだ使える」「もったいない」というAさんの言葉は、私たちにとってはゴミに見えても、Aさんにとっては大切な物であるという認識のズレを示しています。
高齢者のゴミ屋敷を理解する多角的な視点