私は建築士として、高齢者住宅の設計に長年携わってきました。その中で、高齢者の住環境が、彼らの生活の質に大きく影響すること、そして時には「ゴミ屋敷」問題にまで発展し得ることを痛感しています。先日、あるクライアントから相談を受けました。ご両親の家がゴミ屋敷化しており、何とかしたいとのことでした。その家を訪れた時、私は衝撃を受けました。築年数の古い戸建てで、廊下や階段は物で溢れかえり、リビングのソファは雑誌や衣類で埋もれていました。キッチンには使われていない調理器具や食器が散乱し、衛生状態も芳しくありませんでした。ご両親は二人暮らしでしたが、奥様は足が悪く、ご主人も認知症の初期症状があるとのことでした。このケースを見て、私は改めて高齢者向けの住環境デザインの重要性を認識しました。ゴミ屋敷化の原因は多岐にわたりますが、住環境がその一因となることは少なくありません。例えば、収納スペースが不足している家では、物が床や通路に置かれやすくなります。特に高齢者の場合、物が多すぎると転倒のリスクも高まります。また、動線が悪く、物が取り出しにくい、片付けにくいといった構造も、整理整頓を妨げる要因となります。さらに、高齢者にとっては、高い場所の収納や、かがんで取り出すような低い場所の収納は、身体的な負担が大きく、結果的に使われなくなり、物が溢れる原因となります。私が設計する高齢者住宅では、こうした問題を解決するために、いくつかの工夫を凝らしています。まず、十分な収納スペースの確保です。手の届きやすい高さに可動棚を設けたり、奥行きの浅いクローゼットを採用したりすることで、高齢者でも使いやすい収納を心がけています。また、物の定位置を決めやすいように、収納家具の配置や種類を工夫することも重要です。次に、バリアフリー設計です。段差をなくし、手すりを設置することで、移動をスムーズにし、転倒のリスクを減らします。これは、高齢者が自分で動ける範囲を広げ、片付けなどの家事を行いやすくすることにも繋がります。