ゴミ屋敷問題は単なる衛生問題に留まらず、そこには様々な背景を抱えた人々の苦悩が隠されています。長年ケースワーカーとして多くのゴミ屋敷と関わってきた私は、そのたびに人間の複雑な心理と社会の課題を痛感してきました。ある日、一本の電話が入りました。「近所にひどいゴミ屋敷がある。悪臭がひどく、害虫も発生しているようだ。何とかしてほしい」。連絡を受けてすぐに現場へ向かいました。その家はまさに「ゴミの山」と呼ぶにふさわしい状態でした。玄関からリビング、そしてキッチンまで、足の踏み場もないほどに物が積み上げられ、独特の異臭が漂っていました。住人は70代の女性、Aさん。身なりは整っているものの、どこか疲れた表情をしていました。Aさんとの最初の面談は困難を極めました。彼女はゴミの山を「大切な物」だと主張し、片付けることに強い抵抗を示しました。しかし、私は諦めませんでした。何度も通い、少しずつ信頼関係を築いていきました。Aさんの話を聞く中で、彼女が長年一人暮らしで孤独を感じていたこと、そして過去の辛い経験から物をため込むようになったことが明らかになりました。物をため込むことで心の隙間を埋めようとしていたのです。私たちはまず、Aさんの健康状態をチェックし、衛生面でのリスクを説明しました。そして、小さな目標から始めました。まずは生活空間の一部だけを片付けること。最初は嫌がっていたAさんも、少しずつ変化を受け入れてくれるようになりました。地域のボランティア団体や清掃業者と連携し、少しずつゴミを撤去していきました。その過程で、Aさんの顔には少しずつ笑顔が戻り、自ら片付けに参加する意欲を見せるようになりました。ゴミが減っていくにつれて、Aさんの心の中も整理されていくようでした。私たちはゴミ屋敷の問題を個人の責任としてだけ捉えるのではなく、その背景にある社会的な要因にも目を向ける必要があります。
ケースワーカーが見たゴミ屋敷の現実と支援