私は、長年高齢者の心理カウンセリングに携わってきました。その中で、多くのご家族が「ゴミ屋敷」になった高齢の親御さんとの関係に深く悩み、葛藤している姿を目の当たりにしてきました。先日、Dさんという女性が相談に来られました。実家に住む父親が、数年前から物を溜め込むようになり、今では家全体がゴミ屋敷状態になっていると言います。Dさんは何度も片付けようと試みたそうですが、その度に父親は激しく怒り、「俺の物を勝手に捨てるな!」と反発するそうです。Dさんは、「父のことが心配で、どうにかしたいけれど、何を言っても聞いてもらえない。私ももう疲れ果ててしまって…」と、涙ながらに話してくれました。このような家族の葛藤は、高齢者のゴミ屋敷問題において非常に普遍的なものです。家族は親の生活環境を心配し、改善しようと努力しますが、親はそれを拒否し、結果として家族関係に深い溝ができてしまうことがあります。なぜ、親は家族の言葉に耳を傾けてくれないのでしょうか。まず、高齢者自身の心理的な抵抗があります。物を溜め込む行為は、過去の思い出や、失われたものへの執着、あるいは孤独感を埋めるための行為である場合があります。家族がそれを一方的に「ゴミ」として処分しようとすることは、高齢者にとって、自分の人生や存在そのものを否定されるように感じられることがあります。また、認知機能の低下により、家族の言葉の意味を正確に理解できなかったり、整理整頓の必要性を認識できなかったりすることもあります。次に、家族側のジレンマです。親の健康や安全を考えると、ゴミ屋敷状態を放置することはできません。しかし、無理に片付けようとすれば、親との関係が悪化し、さらに状況が悪化する可能性もあります。どこまで介入すべきか、どのように説得すべきか、家族は常に難しい判断を迫られます。Dさんのケースでは、私はまず、Dさん自身が抱えている感情を吐き出すことの重要性を伝えました。そして、父親の行動の背景にある心理を理解することから始めるようアドバイスしました。
高齢者のゴミ屋敷問題における家族の役割と葛藤