本事例研究の対象者であるA氏(50代男性)は、過去三回にわたり専門業者によるゴミ屋敷清掃を依頼しながらも、その都度半年以内にリバウンドを繰り返してきたという典型的なケースでした。A氏の部屋は常に天井付近まで物が積み上がり、最後には玄関のドアさえ開かなくなるのが常でした。私たちは四回目の清掃依頼を受けた際、単なる清掃作業にとどまらず、リバウンドの連鎖を断ち切るための包括的な介入を実施しました。まず、A氏へのヒアリングを通じて、彼が仕事の強いストレスから買い物依存の状態にあり、特に深夜のネットショッピングで届いた段ボールを一度も開けずに放置していることがリバウンドの主因であることが判明しました。そこで私たちは、物理的な清掃を終えた直後から、福祉相談員と連携し、A氏の買い物行動を抑制するための生活習慣の見直しに着手しました。具体的には、クレジットカードの一時的な利用停止と、届いた荷物はその場で開封し、段ボールを即座に捨てるという「即時処理ルール」の導入です。また、これまでのリバウンド時には周囲からの批判を恐れて孤立を深めていたため、週に一度の清掃ボランティアによる訪問を受け入れることを条件としました。この訪問は単なる掃除の手伝いではなく、A氏の話を聴くという「対人関係の構築」に主眼が置かれました。清掃から三ヶ月が経過した頃、A氏は一度だけゴミを溜め始めましたが、訪問ボランティアがいち早くその予兆を察知し、叱責することなく一緒にゴミ出しを行ったことで、致命的なリバウンドを回避することができました。清掃から一年が経過した現在、A氏の部屋には床が見え、友人を通せる状態が維持されています。この成功の鍵は、ゴミを排除するだけでなく、居住者がゴミを必要としていた心理的な渇望を、人間的な繋がりや新しい趣味に置き換えることができた点にあります。また、リバウンドを「失敗」と捉えるのではなく、生活再建の過程で起こり得る「一時的なゆらぎ」として捉え、周囲が早めに見守る体制を整えたことも重要な要因でした。ゴミ屋敷のリバウンド対策は、個人の意思力に頼るのではなく、社会的なセーフティネットの中に居住者を繋ぎ止めることで初めて実効性を持つことを、本事例は如実に物語っています。