ゴミ屋敷から退去するということは、多くの場合、それまでの生活環境のすべてを失うことを意味します。強制退去を執行された当事者の多くは、住居を失うだけでなく、自己効力感を完全に喪失し、社会的な死に近い状態に置かれます。もしここで、退去後のアフターケアがなされなければ、彼らは新しい住居でも、あるいは路上生活に陥ったとしても、再び同じように物を溜め込み、孤独を深めていくことになります。ゴミ屋敷問題の真の解決は、退去という「物理的な排除」の後に、いかにして「社会的な包摂」を実現できるかにかかっています。近年、先進的な自治体やNPO法人では、ゴミ屋敷を退去した後の当事者に対して、定住支援やメンタルケア、就労支援を組み合わせた伴走型のサポートを提供しています。ゴミを溜め込まざるを得なかった背景にある「心の傷」や「孤立」を癒やさない限り、部屋をどれだけ綺麗にしても意味がないからです。退去後の支援において重要なのは、本人が「社会の中に居場所がある」と感じられるような繋がりを作ることです。例えば、地域のコミュニティカフェやボランティア活動への参加を通じて、他人とコミュニケーションを取る機会を増やすことで、物に対する異常な執着が緩和されるというデータもあります。また、退去の際に失った身の回りの品を揃え直す支援も、新しい生活への意欲を高めるために有効です。私たちは、ゴミ屋敷からの退去を「人生の終わり」ではなく「リスタート」と定義し直すべきです。実際、強制退去というショックな出来事をきっかけに、精神科の治療を受け始め、数年後には見違えるほど整理整頓された部屋で穏やかに暮らしている人々を、私は何人も知っています。彼らは口を揃えて「あの時、部屋を追い出されていなければ、今でもゴミの中にいた」と語ります。退去という厳しい現実が、実は彼らにとって唯一の救いの手だったのです。社会の役割は、ゴミ屋敷という迷惑を排除して満足することではなく、そこから這い上がろうとする人々に、再び立ち上がるための杖を差し出すことにあるはずです。退去後のフォローアップまでを含めたトータルな支援体制を構築すること。それが、ゴミ屋敷問題という現代の病理に対する、最も根本的で、そして慈愛に満ちた解決策であると確信しています。ゴミを捨て去ったその後にこそ、本当の意味での「人間らしい暮らし」の再建が始まるのです。
ゴミ屋敷からの退去を人生の転機にするためのアフターケアと社会復帰支援の重要性