築二十年の賃貸マンションで一人暮らしをしていた私は、ある夏の日から、隣の部屋から漂ってくる奇妙な臭いに悩まされるようになりました。最初は生ゴミが少し傷んだような臭いでしたが、日は追うごとにその臭いは濃くなり、アンモニアと発酵した何かが混ざり合った、鼻を刺すような、吐き気を催す悪臭へと変わっていきました。私はたまらず管理会社に連絡し、隣室の調査を依頼しました。数日後、管理会社の職員と警察官が立ち会う中で隣のドアが開けられたとき、私は通路の反対側でその光景を目撃しました。ドアが開いた瞬間、雪崩のように溢れ出してきたのは、数えきれないほどのペットボトルでした。玄関から奥の部屋まで、それはまさにプラスチックの壁。居住者の姿は見えませんでしたが、ゴミの山の頂上付近にわずかな隙間があり、そこで誰かが息を潜めているようでした。隣室の住人は、三十代くらいの物静かな男性でした。毎日決まった時間に仕事に行き、夜遅くに帰ってくる、どこにでもいる会社員だと思っていました。しかし、彼の部屋の中は、私たちが共有している日常とは全く別の、地獄のような光景が広がっていたのです。清掃が始まると、業者が防護服に身を包んで、巨大な袋を何百枚も運び込みました。運び出されるペットボトルの多くは、中身が黄金色の液体で満たされており、作業員が誤ってボトルを踏むたびに、プシュッという音とともに凄まじい悪臭が廊下にまで漂ってきました。私は自分の部屋のドアを閉め切り、換気扇を全開にしましたが、それでも壁を透かしてあの臭いが襲ってくるような気がして、夜も眠れませんでした。一週間かけて部屋が空になったとき、運び出されたペットボトルの総数は一万本を超えていたそうです。隣人の男性は、その後の話し合いで退去していきましたが、最後に見た彼の背中は、あまりにも小さく、何かに怯えているようでした。私は彼を憎むことはできませんでした。あんなにたくさんのペットボトルを一人で飲み干し、一人で溜め込んでいった彼の孤独を思うと、恐怖よりも先に、胸が締め付けられるような悲しみを感じたからです。ゴミ屋敷は他人事ではない。誰の心の中にも、一本のボトルから始まる闇が潜んでいるのかもしれない。壁一枚隔てた場所で起きていたあの惨劇は、今も私の記憶に深く刻まれています。
隣室から漏れ出す異臭と壁を埋め尽くすペットボトルの恐怖